真核細胞の細胞核は,核 膜 という脂質二重膜によって細 胞質と隔てられている.核 膜には核膜孔 とよばれる孔が存 在する.こ の核膜孔は巨大な蛋白質複合体によって構成さ れ,さ まざまな分子が核-細胞質間を行 き来する際に通過す る場になっている.す なわち,核-細 胞質間の情報交換は核 膜孔を介 して行なわれるのである.こ のような情報交換は, 細胞内外の環境応答によって適切に行なわれなければなら ない.核-細 胞質問蛋白質輸送は機能性蛋白質を選択的に運 搬する機構であり,こ れを担 う輸送因子は酵母か らヒトま で広 く保存 されている.近 年,核-細 胞質間蛋白質輸送に関 する研究は急速に進展 し,基 本的なメカニズムはかなり明 らかになっている.し かし,こ の輸送機構 がさまざまな高次 生命現象にどのように対応 し,ど のような役割を果たして いるのかという問いに対して,そ の答えは多く出ていない. ,発 生に伴う細胞分化の研究は,主 として遺伝子発 現調節 をつかさどる転写因子に焦点が当てられてきた.こ れらの転写因子が特定の時期に発現することによって細胞 分化の方向性が決まり,発 生が適切に進行すると考えられ てお り,転 写因子以外の機能因子が主導的な要素 としてあ げられることは少なかった. 最近の筆者らの研究により,核 輸送因子importin αの発 現変化が細胞分化に必要不可欠であることが明らかになり, 細胞分化の研究に新たな展開がみられた.本 稿では,こ れ までの知見をふまえつつ筆者らの研究結果を紹介 し,細 胞 分化における核-細胞質問蛋白質輸送機構の重要性について 解説する.