はじめに 大腸・肛門の悪性腫瘍において,腺癌以外の組織型 を示す悪性腫瘍は直腸・肛門管に比較的多く見られる とされるが,今回われわれは,直腸小細胞癌と診断さ れ放射線化学療法の後に手術を行った症例で,術後に 扁平上皮癌となる組織変化をみるまれな症例を経験し たためこれを報告する. 症 例 症例:63歳,女性. 主訴:肛門部不快感. 現病歴:肛門・会陰部不快感と左鼠径部腫瘤を訴え 来院.泌尿器科受診時にとった腹部単純CTにて骨盤 腔内に腫瘤影指摘され,外科紹介となった. 診断の約 1年前の内視鏡検査では肛門管を含めて異 常は指摘されていない. 家族歴・既往歴:特記すべきことはない. 来院時現症:腹部 平坦・軟・圧痛なし.左鼠径部 に 3 cm大の皮下腫瘤を触れる.発赤・腫脹はみられ なかった. 血液検査所見:一般血液検査では異常を認めなかっ た.術前の腫瘍マーカーはCEAは14.8ng/mlと高値, CA19-9は19.0U/mlと正常値であった.SCC,NSE, ProGRPは術前に測定されていない. 腹部CT所見:直腸に不整型の壁肥厚が見られる. 腫瘍近傍に59mmの腫瘍性病変がみられリンパ節転移 と考えられる.左鼠径部には35mm大に腫大したリン パ節みられ転移と考えられる.肝にはSOL指摘され なかった(Fig. 1). 下部内視鏡所見:直腸下部左側に歯状線にかかる 2 型腫瘍が見られる.口側辺縁に接する形で直腸外から の圧排によると思われる粘膜の盛り上がりが見られ, リンパ節腫大による圧排と考えられた(Fig. 2). PETーCT所見:直腸に結節状の異常集積(SUVmax 値:9.56)がみられ,原発腫瘍と考えられる.周囲リ ンパ節・左鼠径部に異常集積(SUVmax値:8.27)が みられ,リンパ節転移と考えられる.肝・肺に遠隔転 移を示唆する異常集積は認められない(Fig. 3). 生検標本の病理所見:凝固壊死を伴って細胞質の乏 しい小型の腫瘍細胞のびまん性,シート状の増殖像を 見る(Fig. 4). 診断;Small cell carcinoma 免疫染色;Synaptphsin, CAM5.2,EMA陽性 Chromogranin,CD56,TTF-1, LCA;陰性. 治療経過:骨盤腔内リンパ節転移・鼠径部リンパ節