【はじめに】プラズマを利用したイオンビーム生成は,がん治療をはじめとした医学分野や半導 体プロセスなど様々な分野で応用されている.その中で高価数のイオン種の生成過程やイオンビ ームの生成,制御の研究は効率化のために重要性が非常に高い.これまで,我々は電子サイクロ トロン共鳴(ECR)プラズマを対象にプローブによる従来的な方法及び電子エネルギー分布関数 (EEDF)を用いた評価法によって多価イオン生成に適したプラズマの生成,制御に関する研究を行 ってきた.本学会でも EEDFを用いた評価法は, 従来のプローブ解析に比べ比較的高エネルギー 領域(~100eV)の電子エネルギー成分の評価が可能となることを報告してきた.多くの ECR イオ ン源において,電子エネルギーの推定はコンピュータシミュレーションによりなされてきたが, プローブを用いた計測例は少ない.そこで今回,ラングミュアプローブを ECR イオン源のミラ ー磁場軸(z軸)方向から挿入し,z軸方向のプラズマパラメータの及び EEDF, また磁力線に対応し たそれらの分布測定を行った. 【実験および解析方法】Fig.1 に実験で用いたタンデム ECR 多価イオン源装置の第 2 ステージ及 びプラズマの内部測定に用いた z 軸方向に可動なプローブ(LP1)を示す.ECR イオン源は内径 160mm,長さ 1054mmの真空容器と 2 つの大型ミラーコイル及び 4 つの永久磁石による多極磁場 で構成されている.ミラー磁場の強度はコイル A, B,補助コイル C に流す電流で変化させることが 可能である.マグネトロンで発生した 2.45GHz のマイクロ波(最大 1.3kW)を,矩形導波管同軸ウ ィンドウを通し装置上部のロッドアンテナから導入し,ECR 現象を発生させプラズマを生成する. 使用ガスはアルゴン(Ar)である.装置中央に座標原点をとる.LP1は z軸の正方向から挿入してお り,z =0 ~ 400mmで可動である. また x = 0mm, z = 175mmに y = 0 ~ 50mmで可動なプローブ(LP2) を設置する.LP1でプラズマ内部の測定を行い,その間 LP2 でイオン飽和電流 Iisを観測し LP1 に よるプラズマへの擾乱を確認する.LP1で得られた各点のプローブ電流電圧 Ip-Vp特性を測定しプ ローブ解析より電子温度 Te,電子密度 neを求める.EEDF は測定された Ipから求まる電子電流 Ie を Vpで 2回微分することで得られ,EEDFから評価した電子密度 N,電子温度 Teffが求められる. 【実験および解析結果】Fig.2に LP1を z = 100mmで回転角 αを変化させた時の Te, Iis, Teffを示す. Fig.3 には z = 100mmにおける磁力線の断面図と電極の軌道円を示す.これらの結果より,永久磁 石により形成されるカスプ状の磁力線付近(α1)で高い電子温度が確認でき,比較的高エネルギーの 電子が存在することが伺える.また本講演では磁場の強度と電子温度, EEDFの対応関係ならびに 他のプラズマパラメータについても報告を行う予定である.