腎臓は生体に不要な代謝物や薬物,外来性異物の排泄を 担うことで,生体の恒常性維持のために重要な役割を果た している.上記化合物の多くは,血中でアルブミンなどの 蛋白と結合しているため糸球体濾過を受けず,代わりに近 位尿細管血管側から尿細管上皮細胞に取り込まれ,管腔側 から尿中に排出される(尿細管分泌).近位尿細管の血管側 膜および管腔側膜には,上記化合物の膜透過を可能にする 蛋白質(トランスポーター)が存在している. 生体に必要な栄養素(糖,アミノ酸)はその種類に限り があるため,尿細管細胞は各々に対する特異的なトランス ポーターを備えるのに対し,生体に不要な薬物や環境物質 などは多様であるため,それらの輸送には 1つのトランス ポーターが多種類の物質を基質として認識する「多選択性」 の特徴を有する. 有機イオンとは炭素骨格を有し,生理的条件下で荷電し ている物質の総称で,薬物などの生体異物が含まれる.有 機イオンはさらに有機アニオン(有機酸)および有機カチ オン(有機塩基)に分類される.体内に取り込まれた疎水 性化合物は肝臓で代謝を受けて親水性の高い物質(有機イ オン)に変換され,腎排泄を受けるが,薬物代謝物の多く は有機酸になるため,有機酸排泄系は主要な薬物トランス ポーターであると言える.すなわち有機酸トランスポー ターは,薬物の体内動態を支配する因子と言え,薬効・副 作用の個人差の要因となる可能性がある.また異物排泄の 過程で臓器への集積を招き副作用発現に関与する可能性が あり,臨床的に重要である. .腎臓の有機酸トランスポーター 腎で分泌される有機酸には,尿酸やプロスタグランジン などの内因性物質に加え,抗生物質,利尿薬,非ステロイ ド性抗炎症薬(NSAIDs),ACE 阻害薬などの薬物やその 代謝産物(抱合体)がある.有機酸排泄系として,OAT (organic anion transporter)ファミリー,OATP(organic anion transporting polypeptide)ファミリー,NPT(sodiumphosphate transporter)ファミリー,そしてATP 駆動型 トランスポーターの MRP(multidrug resistance-associated protein)ファミリーがある(Fig. 1). ) OATファミリー SLC22 1997 年に PAH(パラアミノ馬尿酸)の取込み活性を指 標にした発現クローニング法により OAT1(SLC22A6) が同定され,以降 OAT2-4が続けて同定された.これら はいずれも腎臓に発現しており,基底側膜に存在する Na-K-ATPase が形成する Na勾配を利用して Na依存 性ジカルボン酸(DCs)トランスポーターが細胞外から取 り込んだ aケトグルタル酸などの DCs の外向きの濃度勾 配を利用して,有機酸の取込みに寄与している(Fig. 1). 尿細管中ではヒト OAT1-3は基底側膜に,また OAT4は 管腔側膜に存在している.OAT1 の輸送基質はよく検討さ れており,プロスタグランジン,尿酸などの内因性物質の ほか,bラクタム系抗生物質,利尿薬,NSAIDs,ACE阻害 薬,メトトレキサートなどや,硫酸抱合体やグルクロン酸 抱合体を輸送する.またバルカン腎症の原因と考えられる 臨床薬理 Jpn J Clin Pharmacol Ther 4293)May 2011 149