二次元層状物質に対する電界効果を利用した機能性デバイスの開発が近年急速に進んでいる。 シリセンはグラフェンと類似の電子物性を持つ事から、機能性材料としての利用が期待されてい るが、その化学的な不安定性の為に応用利用はこれまでに殆ど進んでいない。しかし近年 Tao ら が電界効果型のデバイスを報告し[1]、シリセンへの電界効果に対する注目が急速に高まっている。 シリセンへの電界効果を利用したデバイスをより効率的に設計するには、界面での相互作用が 印加電場により如何に変化するか、その機構を解明する事が必須である。これまでシリセンを用 いた異種物質界面において、化学結合や印加電場で誘起される静電相互作用でバンドギャップが 変化する事が第一原理計算から報告されている[2,3]。しかし、化学結合と印加電場の相関につい ての理解は殆ど進んでいない。そこで本研究では第一原理計算を用い、シリセン-アミン(NH3, NH2CH3)ヘテロ界面の電子物性の電界効果による変化について、Si-N 間化学結合及び電子分極に 着目して解析し、機構の解明を行った。 図 1 に印加電場によるバンドギャップの変化を示す。シリ セン単体ではギャップの変化は電場の符号に因らないが、 NH2CH3 や NH3 が吸着した場合、正の電場を印加するとギャ ップが広くなる一方、負電場ではギャップが小さくなる。 図 2(a)は NH3吸着による電子密度分布の変化である。黄色 と緑の分布はそれぞれ電子密度の増加と減少を示す。緑の分 布が NH3部分に主に見られる事は、NH3 とシリセンの化学結 合に伴い、NH3 からシリセンに電子が移動した事を示す。 図 2 の(b), (c)は印加電場による電子密 度の変化である。正の電場(b)を印加する と NH3 からシリセンへの電子移動が促 進される一方で、負の電場(c)では逆にシ リセンへの電子移動が弱められている。 これらの化学結合並びに外部電場によ る電子分極が組み合わさり、バンドギャ ップに対する電界効果が決定づけられる事が明らかとなった。 [1] L. Tao, E. Cinquanta, D. Chiappe, et al., Nature Nanotech., 10, 227 (2015). [2] Z. Ni, Q. Liu, K. Tang, et al., Nano lett., 12, 113 (2012). [3] T. P. Kaloni, G. Schreckenbach, M. S. Freund, J. Phys. Chem. C, 118, 23361 (2014). -0.02 -0.01 0.00 0.01 0.02 0.03