プラズモンに起因し,金属表面にまとわりつくように伝搬する表面波は,プラズモニクスの起 点となるもので,テラヘルツ波領域においては周期構造を有した金属の人工物であるプラズモニ ック結晶を用いて励起することができる.しかしながら,その重要性にもかかわらず,表面波に ついて定量的に調べられた例は少ない.前回の講演では,フリースタンド型ワイヤーグリッドに おける表面波の周波数が,周期性のみを考慮した表面波の励起周波数よりも小さくなるというこ とを明らかにし,ワイヤーグリッドの両面に存在する表面波が結合していることが示唆された[1]. そこで今回は,両面の表面波の結合に関する情報を得るため,FDTD 電磁界計算を用いて,様々 な厚さや断面形状を持つワイヤーグリッドにおける表面波の状態を観測した. 計算の系を図 1(a)に示す.断面形状が長方形のタン グステンワイヤーを並べたワイヤーグリッドに THz 波を垂直に入射し,表面波から再放射された THz波を 検出した.再放射された THz波だけを検出できるよう, 直接透過してくる THz 波を 2 枚の金属板で遮断した. グリッド間隔 dは 200 μm,ワイヤーの幅 aは 100 μm として厚み bを変化させた.図 1(b)は,b = 150 μmの 時の表面波の振幅を入射波の振幅で規格化したもので ある.表面波の周波数と振幅の厚み依存性を図 2に示 す.表面波の周波数は厚みの変化に伴って規則的に変 化しており,それに同調して励起される表面波の振幅 も変化している.これらの変化の周期はおよそ 100 μm であり,グリッド間隔の半分である.表面波の周 波数はグリッド間隔に対応していることから,この周 期的な変化は,グリッド内部の伝搬モードによって, 両面に存在する表面波の結合の状態が変化したこと によるものであると考えられる. 講演では,ワイヤーグリッドの断面形状と表面波の 結合状態について,定量的に考察した結果を報告する 予定である. [1] 堀田 他,第 74回応用物理学会秋季学術講演会(2013年,京都),18p-A14-5. 図 2 表面波の周波数(左軸,○印)と振幅(右 軸,■印)の厚み依存性. 0.05 0.10 0.15 0.20