1. はじめに コンピュータ時代になってから言語研究の可能性が広がった。大規模の言語データベースを利用し、 多人数の参加者の実際の言語使用を辿ることができるようになった。しかし、データベースが大きく なるほど、自動的な解析ツールが不可欠になってくる。今までの獲得研究では単語単位で検索したり、 手動でコーディングしたりしてきたが、負担が大きいため、処理できる量が比較的少なかった。自動 的に基礎的な文法タグ(品詞情報、活用形の解析、文構造の情報など)を付けることが可能であれば、 データベースで公開されているデータをより効率よく解析できるようになる。 本研究では国際発話データベース CHILDES(MacWhinney 2000、宮田 2012b、宮田・森川・村木 2004)のために開発された統語解析プログラム GRASP(Grammatical Relations Analysis for Spontaneous Protocols; MacWhinney, 2008; Sagae, Davis, Lavie, MacWhinney, & Wintner 2007, 2010; Sagae, Lavie & MacWhinney, 2005)の日本語版を紹介する。 GRASP は CHILDES の入力フォーマット CHAT(宮田 2012 を参照)に従っている発話ファイルを解 析し、それぞれの発話行に統語情報専用の行(%gra 行)を加える。統語解析で単語と単語の間の依存 関係を記号化し、それぞれの役割を表す。例えば「同じ本見る?」という文の場合は「同じ本」という 目的語が「見る」という述語に支配されている。目的語がさらに「同じ」という修飾語とその依存先 (ヘッド)の「本」に分析される。視覚的に括弧で表すと、この文の構造が [[[おなじ]MOD 本]OBJ 見る] となる。GRASP はこのような依存関係の情報を語順に沿った番号で表している。各単語に番号 が振られてから、二番目の情報としてその依存先の番号が加えられる。三番目の情報として文法的役 健康医療科学研究 第 3 号 2013 [原著論文]