1. 緒言 光触媒反応は電子と正孔による光化学反応であるが,電子と正孔の多くは反応に寄与する ことなく再結合しており,再結合を支配する電子や正孔のトラップが光触媒活性に大きな影 響をあたえると考えられる。電子トラップの役割を正確に理解し,高活性な光触媒を開発す るためには,電子トラップ密度のエネルギー分解は不可欠である。しかし,粉末状の光触媒 について電子トラップ密度のエネルギー分解測定は,メチルビオロゲン注入時の懸濁液のpH 調整により電子トラップの深さを推定する光化学法が報告されているのみであり,この方法 は多量の試料,長時間の光照射と無酸素下での実験操作が必要で,実用的とはいえない。光 音響分光法(PAS)は,材料の光吸収を,励起状態の失活過程で放出される熱により生じる音 波として検出する手法であり,欠陥吸収のような微小な吸収の検出に有効な手段である。本 研究では,PAS測定に影響をあたえない連続光によって励起-トラップされた電子により生じ る可視光吸収を検出する二重励起光音響分光法を改良した逆二重励起光音響分光法 (RDB-PAS)を開発し,酸化チタン(IV)中の電子トラップ密度のエネルギー分解測定を試みた。 2. 実験 酸化チタン(IV)粉末をPASセルに装填し,メタノール蒸気を含んだアルゴンをフローした後, 密閉状態にした。80 Hzに変調した625 nmのLEDを検出断続光とし,キセノンランプを光源と し,長波長側から掃引する励起連続光を同時照射した。 3. 結果と考察 RDB-PAスペクトルはト ラップに蓄積した累積量 に対応すると考えて,長 波長側から微分した。Fig. 1にアナタース型(TIO-2) およびルチル型(CR-EL) 酸化チタン (IV)の微分 RDB-PAスペクトルを示す。 TIO-2では伝導帯下端か ら0.45 eV,CR-ELでは0.25 eVの範囲におもに分布することが示唆された。これらの結果は光化学法の結果とほぼ一致し ており,RDB-PAS解析により電子トラップのエネルギー分布の観測が可能であると考えられる。