われわれは,舌癌において制御困難な再発をきたし得る部位として「舌骨傍領域」に注目している。同領域は舌癌における原発巣と頸部の継ぎ目に位置し,口腔からのアプローチは困難で,かつ通常の頸部郭清術の郭清範囲外である。病巣は舌下神経の深部で舌動脈を巻き込むように出現し,やがて副咽頭間隙に広く進展して根治困難となりうる。このような再発は,舌動脈に沿って出現する小リンパ節への転移によるものであろうと考えている。臨床的に明らかな再発病巣として発見される時点では既に周囲へ浸潤していることが多く,治癒切除を施行するためには遊離皮弁が必要となる場合がある。病巣は可能な限り早期に発見されるべきだが,舌骨傍領域の画像診断には限界があるため,頸部郭清術を施行する際には必ず同領域の組織を摘出するようにしている。治療後の機能温存が強く求められる部位であるので,合併症のより少ない治療を選択すべきである。