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Aedes hensilli

National Institutes of Health

Papers overview

Semantic Scholar uses AI to extract papers important to this topic.
2016
2016
ジカウイルスは,フラビウイルス科フラビウイルス属に 分類され,デングウイルス,黄熱ウイルス,日本脳炎ウイ ルスやウエストナイルウイルスと近縁である。これらのウ イルスは蚊によって媒介され,脊椎動物が増幅動物や自然 宿主となる。ジカウイルスもデングウイルスと同様にヤブ 蚊によって媒介されるウイルスで,霊長類と蚊の間で感染 環が維持されている。1947 年にウガンダのジカ森林で黄 熱研究のために飼育されていたアカゲザルから初めて分離 された。このことは,黄熱ウイルスのようにサルと蚊の間 で感染環が維持されている森林型感染環の存在が示唆され る。ジカウイルスの媒介蚊はネッタイシマカやヒトスジシ マカであり,日本国内に生息しデングウイルスの媒介蚊で もあるヒトスジシマカが媒介能を有することは感染実験に より確認されている。しかし,ヤップ島での流行では Ae. hensilli が,仏フランス領ポリネシアでの流行では Ae. Polynesiensis といった固有のヤブカがそれぞれ媒介蚊と考 えられており,媒介可能な蚊は今後の研究で増える可能性 がある。南米では野生のマーモセットからジカウイルスが 検出されていることから,すでに新世界ザルと森林のヤブ カの間で森林型感染環が形成されている可能性がある。そ のことは,南米からジカウイルスを根絶することはもはや 困難になったことを示唆する。 マウスのジカウイルスに対する感受性はそれほど高くな く,インターフェロンノックアウトマウス(Ifnar1 など) による報告はあるが,遺伝子改変マウスでない自然なマウ スとしては,SJL マウスにおける感染成立と胎児の発育障 害の論文が報告されたところである。しかし,SJL マウス は細網細胞肉腫をきたすマウスで,免疫研究分野,実験的 アレルギー性脳脊髄炎誘発の研究に使われるマウスで,あ る意味で病気持ちのマウスともいえ,純粋な自然なマウス とはいいがたい。この論文でもフラビウイルスに比較的感 受性の高い C57BL/6 マウスへのジカウイルス感染は成立 していない。今後,ワクチンや抗ジカウイルス剤の有効性 評価には,サルの感染モデルの確立が重要である。 ジカの森でのアカゲザルからの最初のジカウイルス分離 株(MR766 株)は,戦後ロックフェラー研究所に日本人 として初めて留学された大谷明(元国立感染症研究所所長) 先生が,帰国時に凍結乾燥アンプルの状態で分与されたも ので,旧予防衛生研究所時代から国立感染症研究所に 50 数年間保管されていた。ミクロネシアの分離株は入手でき なかったが,MR766 株を起こすことができた。そこで我々 は,MR766 株の全長遺伝子配列 (10807bp) を決定し GenBank に登録した(Accession No. LC002520)。MR766 株を 用いてウイルス遺伝子検出系と抗ジカウイルス IgM 捕捉 ELISA を構築できた。そして 2013 年 12 月にタヒチ(ボ ラボラ島)からのわが国最初のジカ熱輸入症例の確定に繋 がったわけである。ジカウイルスのヒトからの分離は, 1954 年のナイジェリアの発熱と頭痛を伴った 10 歳の少女 からの分離がジカウイルスの最初のヒトからの分離のよう である。しかし,1968 年のナイジェリアで発生した熱性 疾患の流行の中,3 人の子供からウイルスが分離された。 臨床研究の中でジカウイルスが分離され,発熱性感染症と の関連が明らかになったという意味ではこの時であるとい える。 ジカ熱は,発熱がそれ程高くなく発熱を自覚せず発疹に 気づいて病院を受診する患者も多いので「ジカウイルス病」 「ジカウイルス感染症」などの病名が提唱されているが, トピック